２０１５年２月。

年が変わるだけでこれだけ人は騒げるのかという年始は随分前のことのように感じる２月。

わたわたと動き回る人間を尻目に殺して猫はみゃーと鳴き、犬はわんと吠えながら路地裏を歩いていた。日本では食品に異物が混入していたと騒ぎになっていたようだ。

ビニールだとかネジだとか更には歯も入っていたそうでとても面白い。ビニールもネジも少量なら何とか食べられるのではないか。歯入りの商品をゲットした人はなんて運の強い人だろう。

歯は大事である。例えば３００億円のプラント建設のプレゼンに向っていた時に突然暴漢に襲われ顔面をグーで殴られ前歯を根元から欠損、しかし歯医者に行く時間はないし無くなった前歯は雑踏にまぎれて見つからない。このままプレゼンに向えば結果は自明の理で前歯を欠損している人間に３００億もの巨額の発注をする人間などいない。

「タバコさしたまましゃべれますよ」なんて言ったところで何の足しにもなりはしない。もはやダメ。このままルソン島支店に配属だな、なんて落ち込んでいたその時、ポケットに手を入れると前日に食べたナゲットの中にあった歯があるではないか。

差してみるとサイズ感もジャストフィット、コンビニにダッシュで向かい瞬間接着剤を購入、歯にぬって差し込んでプレゼン会場へ。一度地獄を見た人間は強い。前歯をなくした人間は強い。どこのだれの歯だか知らぬがそんな歯を差し込んだ人間は強い。

その堂々としたプレゼンは相手企業のハートをがっちりキャッチ、見事受注を勝ち取った。なんて事が起こる可能性もあるわけだから歯ぐらいいいのではないか。むしろナゲットにはすべて歯を入れるべきではないか。そんな妄想をした。

街自体が異物混入のようなここバンコクで。もう少ししたら暑くなり始めます。